コロナ禍が今もって収まりません。それでも、昨年末、中小企業家同友会の仲間と永井荷風ゆかりの地を訪ねてきました。まずは、東向島駅から小説「濹東綺譚」の舞台となった旧玉ノ井へ向かいました。
目標は、昭和11年発行の地図を頼りの副主人公「お雪」の娼家のあった旧寺島町七丁目61番地安藤まさ方を探り当てることです。

そこは、ラビラント(迷宮)と呼ばれ、細い路地が入り組んで一度迷い込むと出てこれなくなると言われた一角にありました。

当時の建物は、昭和20年3月10日の東京大空襲で灰燼に帰していますので、残っているはずの路地の位置関係から該当地の見当をつけるしかありません。
ラビラントでの目標達成は、予想したとおり、容易なことではありませんでした。

「濹東綺譚」は、そんな玉の井でのお雪との淡々とした交情を描いた小説でした。

この小説が世に出たのは、昭和11年11月です。二・二六事件のあった年で、日本の軍国主義化が急激に進められていた時代でした。
荷風は、軍部には非協力的な態度を貫きましたが、表立った批判はしませんでした。
もっとも、日記文学の傑作「断腸亭日乗」では、軍部や国家主義者に対する痛烈な批判を記していましたが。

今、これまで専守防衛を掲げてきた日本政府が、国際環境の悪化を理由に敵基地攻撃まで踏み込もうとしてきています。

荷風が生きていたなら、憲法9条を巡る国是の大転換を「断腸亭日乗」でどのように書き留めるのか興味あるところです。

 何故敢えて 迷い込むのか ラビラント

今年こそコロナ禍が収まり、平和が保たれる良い年でありますよう願ってやみません。

 

2023年 元旦

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